終活をしていく中で遺産相続などを考える人も多いでしょう。
遺産相続を的確に行うためには、銀行口座を整理することが大切です。
この記事では、終活での銀行口座の整理が重要な理由や方法を解説しています。
銀行口座は生前のうちから自分で整理しておかないと、遺族に大変な思いを強いる可能性もあるので注意しましょう。
終活で銀行口座の整理が必要な理由
終活で銀行口座を整理することは、以下の理由により必須です。
使っていない銀行口座に気付ける
終活で銀行口座の整理が必要な理由として、使っていない銀行口座に気付ける点があげられます。
銀行口座は貯蓄用や子どもの大学費用用など様々な理由で開設するもの。
「My Voice」が行った銀行口座の所有数に対するアンケート調査によると、銀行口座を3個持っている人が最も多く全体の23%でした。
また3個以上を保有している人が全体の70%もいるため、非常に多くの人が複数の銀行口座を保有していることがわかります。
銀行口座を整理していくなかで、使っていない口座がこんなにあるのかと驚かれるかもしれません。
もしもの際の遺族の手続きが簡単
終活で銀行口座を整理しておくと、もしもの際に遺族の手続きが簡単に済みます。
万が一あなたに不幸があった際には、遺族は遺産相続のためにあなたの銀行口座をすべて調べ上げなければいけません。
この口座の中身を調べる作業は貯蓄額に関わらず、開設している金融機関に対してすべて行わなければいけないので非常に手間がかかります。
遺産相続は申告期限が10ヶ月と決められているので、保有している銀行口座が多ければ多いほど遺族にとっての負担も大きくなるのです。
実際に経済アナリストで有名な森永卓三さんは、父親の遺産相続において銀行口座の開示で大変な思いをしたそうです。
父が脳出血で倒れてから、高田馬場にある実家のマンションに、私は月に2~3回足を運んでいた。そうしないと、郵便受けから郵便物があふれてしまう。その状態を放っておくと、不用心で空き巣にねらわれやすい。
郵便受けに溜まった郵便物を紙袋に入れると、実家のカギを開けて部屋に入り、ボーンとそのへんに放り投げておいた。父が亡くなったとき、それらの郵便物が部屋で山のように積み重なっていた。
実家にこもってそれらの郵便物を一つずつ開けてみることにした。その気の遠くなるような作業を経て、銀行口座が9つ、証券会社の口座が2つあることがわかった。
今はルールが変わって、銀行の全店照会(全国に散らばる本支店の横断検索)ができるようになった。2011年当時は、全店照会を頼んでもやってもらえなかった。私が「そちらの銀行に父の口座はありますか」と訊いても教えてもらえない。「××支店に口座がありますか」とまで訊かなければ、口座があるかどうかは教えてもらえなかった。
日本の金融機関は、地方銀行や信用金庫、信用組合まで含めると、全国に500くらいはある。それらの金融機関に枝葉のように支店があるわけだ。1個1個しらみつぶしに、自力で全店照会するなんて物理的にできるわけがない。だから郵便物の手がかりなどを頼りに、故人がどこの金融機関と取引していたか当たりをつけなければいけなかったのだ。
引用元:文春オンライン
現在は上記のように支店ごとにしらみつぶしをする必要はありませんが、それでも金融機関ごとに問い合わせが必要なのは変わりありません。
遺族に大変な負担を強いることになるので、概ね2個~3個程度になるよう利用する金融機関を絞っておくと良いでしょう。
休眠口座や口座維持手数料を防げる
銀行口座を整理しておくと、休眠口座や口座維持手数料を取られる心配がなくなります。
銀行口座は2018年の法改正により10年以上取引のない口座は休眠口座とみなされ、預金を民間の子どもや生活困窮者支援として利用することが可能です。
当然預金の権利者は自分自身なので本人や遺族がおろすことは可能ですが、窓口での手続きが必要など非常に手間がかかります。
休眠口座になるくらい放っておいている口座であれば、今後も利用しない可能性が高いので早めに解約してしまいましょう。
また、一部のネット銀行などは口座維持手数料が発生するケースもあります。
口座維持手数料は利子以上に設定されているので、利用せずにただお金を預けているだけでは手数料がどんどん差し引かれてしまいます。
早めに口座を整理することで、無駄に損をする心配もありません。
終活で銀行口座を整理する方法
それでは具体的に銀行口座を整理する方法を解説します。
現在開設してある口座を一覧で書き出す
まずは、自分が現在開設している口座を一覧表で書き出しましょう。
もちろん口座は普通預金口座だけでなく、定期預金口座や証券口座なども含みます。
自分の金融資産を管理している口座はすべて網羅することが必要です。
具体的には以下のように記載すると情報を整理しやすいでしょう。
金融機関名 | 支店名 | 口座の種類 | 口座番号 | 残高 | 使用用途 |
---|---|---|---|---|---|
金融機関A | AA支店 | 普通預金 | 123456 | 50万円 | 生活費 |
金融機関B | BB支店 | 定期預金 | 789123 | 500万円 | いざというときの貯金 |
証券会社A | なし | 株式 | 456789 | 400万円 | 資産積み立て |
一覧表を作っていく中で不要だと思われた金融機関の口座は解約を検討してみましょう。
また一覧表を書く際は、エンディングノートを利用するのが便利です。
エンディングノートは自分の終活に関する記録を記しておくためのノート。
医療や介護の意向なども記載できるので、家族がそのノートを読むだけで亡くなった後の手続きなどを進めていけます。
エンディングノートの詳しい書き方については、下記記事を参考にしてください。
自分の開設した口座がわからないときは?
自分の開設した口座がわからないときは、以下を試すと良いでしょう。
- 自宅内にあるカードや通帳から判断する
- 金融機関から届く手紙などで判断する
- サービスなどの引き落としに紐づいている金融機関を調べる
- NISA口座であればe-taxで確認可能
金融機関の情報はネット上の情報照会などで見ることはできません。
郵便物などを頼りに自分で確認するしかないので、忘れないよう管理しておくことが大切です。
口座名義の内容が正しいか確認する
一覧表で解約口座を決めたら、該当の口座に登録してある住所などが正しいか確認します。
口座の登録情報が現在のものと違うと、ATMの取引が制限されたり金融機関からの大事な郵便物が届かなかったりするためです。
いざ家族のために口座をまとめようとしたときに出金に手惑うばかりか、いざというときの遺族の出金にも影響を及ぼします。
引っ越したけど手続きしていない場合や、連絡先の修正を長いことしていない場合は金融機関に問い合わせてみましょう。
使っていない口座はすべて解約する
使っていない、あるいは使用用途が明確でない口座は解約しましょう。
口座の解約は一般的に銀行の窓口に以下の持ち物を持参していき手続きします。
- 通帳
- 届け院
- キャッシュカード
- 本人確認書類
利用する金融機関によっては別途持参する書類などが必要なケースもあるので、手続き前に金融機関の公式サイトで確認しておくと確実です。
使用中の口座情報はエンディンノートに記載
使用中の口座情報は別途エンディングノートに記載しましょう。
また作成した一覧の中で、解約した口座に線を引いておくでも問題ありません。
遺族がひと目見ただけであなたが利用していた金融機関がわかるよう記載してください。
確実に自分の金融機関情報を家族に伝えるためには、メッセージバンクの利用がおすすめです。
メッセージバンクは家族へのメッセージを預けておき、任意のタイミングで送信できるサービスです。
例えばメッセージバンクに利用中の金融機関や口座番号、暗証番号を記載しておき、あなたが亡くなりそうなタイミングに合わせて家族に送信する設定をしておけば確実に口座情報を伝えられます。
情報はメッセージバンクのセキュリティによってネット上で適切に管理されているので、エンディングノートが盗まれたり紛失したりといった心配もいりません。
大事な情報だからこそWebサービスの強固なセキュリティを利用して、確実に家族に情報を伝えられるようにしましょう。
終活で銀行口座を整理する際の注意点
終活で銀行口座を整理する際は、以下の注意点を守ることが大切です。
家族名義の口座への入金は贈与税を意識
銀行口座を整理していく中で、生前に家族への相続を徐々に進めていこうと考える人も多いでしょう。
その際は、贈与税に注意しながら少しずつ入金することがおすすめです。
基本的に年間110万円以上を贈与する場合は、家族であっても税金がかかります。
ただし年間110万円以下でも贈与税が発生するケースもあるので、事前に贈与税の仕組みについて調べておくことが必要です。
キャッシュカードではなく代理人カードを作ることも考える
あなたの資産を自分ではなく、今後は家族に管理を任せたい場合は代理人カードを利用するのもおすすめです。
キャッシュカードはたとえ家族であっても貸与が禁止されているため、代理カードを用意しておくと家族が楽に資産管理を行えます。
代理人カードとは金融機関に任意代理人を届け出ることで、代理人があなたに代わって口座を操作できるカードです。
高齢になり自分で金銭管理するのが不安な人は、利用を検討しましょう。
またクレジットカードでも家族カードと呼ばれる、特定の口座に複数のカードを紐づけて利用できるものもあります。
上手に利用して家族が楽に資産管理をできるようにしておきましょう。
口座を1つに絞るのは避ける
終活で銀行口座を整理する際は、口座を1つに絞るのはやめましょう。
口座を1つに絞ると万が一認知症などで凍結された場合や、金融機関が倒産した際に大きな損害を被る危険性があります。
銀行口座は口座名義人が死亡した場合以外にも、認知症になった際にも凍結される可能性があります。
口座が1つしかないとその口座が凍結された際に家族がお金を引き出すことができません。
成年後見制度などを利用すれば凍結が解除されますが、制度を利用するためには4カ月程度の期間がかかります。
その際に一切のお金が引き出せないと、あなたの認知症治療や介護などの費用を家族が支払わなければならず経済的に大きな負担をしいてしまいます。
リスクに柔軟に対応するためにも、口座は2~3個ほどにしておくと良いでしょう。
終活の銀行口座に関するよくある質問
最後に終活の銀行口座に関するよくある質問を紹介します。
- Q銀行口座を整理するデメリットはある?
- A
終活で銀行口座を整理するデメリットは、基本的にはありません。
しかし面倒だからと口座をメインバンクのみに絞るのは危険です。
認知症による凍結や金融機関の倒産などで大きな被害を負うことにもなるので、2個~3個程度の口座は保有しておきましょう。
- Q銀行口座だけでなくクレジットカードも整理すべき?
- A
銀行口座だけでなく、クレジットカードも使っていないのであれば整理すべきです。
クレジットカードの契約もあなたの死後に遺族が解約手続きを行うので、契約しているカード会社が少ないほど手間がかかりません。
しかしクレジットカードは各種の支払契約に紐づいていることがあるので、解約前に確認しておきましょう。
終活で銀行口座を整理して遺族に負担をかけないようにしよう
終活を行う際は、銀行口座を整理して遺族に負担をかけないようにすることが大切です。
もし口座を整理しておかないと、あなたの遺族は金融機関1件1件に確認をとっていかなければいけないケースもあります。
遺族に負担を強いないためにも、自分自身で口座を整理してすっきりした気持ちで最期を迎えましょう。
また使用している金融機関情報は、メッセージバンクに預けておくのがおすすめです。
エンディングノートに記載してもよいですが、エンディングノートはいざというときに家族に見つけてもらえない可能性もあります。
またセキュリティの観点からも盗難や紛失といったリスクがあるので、ネット上に預けておくのがおすすめです。
サービスも活用しながら確実に口座情報を遺族に渡せるようにしましょう。